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中村 信大 研究室

☆東京工業大学 生命理工学院 生命理工学系☆

 私たち研究室では、動物の組織や細胞の構造や機能の恒常性維持にはたらく細胞内シグナル伝達の仕組みと、その異常で引き起こされる病態の発症機序を分子レベルで解明することを目指しています。現在、分子生物学、細胞生物学、組織化学、動物生理学の実験手法を組み合わせて以下のような研究を行っています。

① GPR116の生理機能とその機能不全による病態発症機構の解明
 Gタンパク質共役型受容体(GPCR)は細胞外刺激の情報を細胞内に伝達を行うことで、感覚受容、神経伝達、内分泌、発生・分化など様々な生理的に重要な役割を担っています。これまでに私たちはGPR116(Ig-HeptaまたはADGRF5とも呼ばれる)が肺における肺胞サーファクタント(呼吸時の肺胞虚脱を防ぐ界面活性物質)の量の調節や脂肪組織においてインスリン依存的な血糖調節に関与することを明らかにしてきました。GPR116は全身の毛細血管に存在していることは分かっていますが、その生理機能については全くと言っていいほど分かっていません。
 血管は血液の通り道となりエネルギー産生に必要な酸素や栄養素の運搬にとって必要な組織でありますが、血管に障害が起こると心筋梗塞や脳梗塞(血管が詰まったり破れたりする)、癌の進行や転移、過剰な免疫応答による炎症性疾患の発症などを引き起こすことが知られています。私たちはGPR116が血管機能(血圧調節、血管透過性、血管保護、血栓制御、免疫応答など)や血管の構造や増殖などに関与しているのではないかと考えて以下のような検証解析を行っています。
(1)GPR116のノックアウトマウスで起こる血管での異常(表現型)を見つけ、その異常がどのようなメカニズムで引き起こされるのかを解析することでGPR116の生理機能を解明を目指しています。現在、GPR116の肺や腎臓の毛細血管の微細構造や機能への役割について、肺の炎症性疾患や腎疾患への関与の可能性を視野に入れて解析中です。
(2)受容体分子の活性化とシグナリングは受容した刺激に対する細胞応答の解明に繋がり、生理機能を解明する上で重要な手掛かりとなります。私たちはGPR116の変異体や合成ペプチド(アゴニスト)を用いることでGPR116の活性化とシグナ伝達機構の解明し血管におけるGPR116シグナリングの影響について明らかにすることを目指しています。

KO mouse HMVEC Structure

② 細胞のストレス応答や感染応答で誘導される新規の遺伝子の機能解明
 私たちは最近、細胞が毒性物質の暴露や感染応答の時に発現誘導される新規遺伝子を同定することに成功しました。これらの遺伝子のはたらきについては不明であるが、細胞の解毒作用や免疫応答を調節しているのではないかと予想しています。これらの遺伝子の細胞機能を解明するため、発現誘導機構の解析や関連遺伝子・タンパク質の網羅的探索を行っています。

③ 細胞内小器官の形や機能をコントロールするユビキチン化の機能解析
 ユビキチン化はユビキチンと呼ばれる小さなタンパク質分子を標的タンパク質に付加する翻訳後修飾の一つで、標的タンパク質の細胞内局在、細胞内輸送、分解、活性化などを調節することで神経活動、遺伝子発現制御、細胞内膜輸送、細胞増殖、発生分化など様々な機能をもっており、ユビキチン化の機能不全が神経変性疾患などの多くの病気の原因となることが明らかにされています。私たちはミトコンドリア、エンドゾーム、小胞体などの細胞内小器官に存在するユビキチン化酵素(MARCHファミリー)や脱ユビキチン化酵素(USP30、USP19)を同定して、細胞内小器官特有の形態や機能の調節に働き、細胞内膜輸送、ミトコンドリアダイナミクス、タンパク質品質管理、精子形成に寄与することを明らかにしてきました。現在、これらの酵素群の活性制御機構や細胞機能への影響を明らかにする解析を行っています。

usp30 testis

私たちの研究に興味があり,努力を惜しまない意欲的な学部生および大学院生の参加を大歓迎します。
研究室見学および研究室所属を希望する方は事前に中村 までご連絡ください。
大学院入試については必ず本学の学生募集要項で内容をご確認ください。

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